国境でタバコを吸いたくなる訳

2012.01.14

アカウラからインドに向かう国境の道はよかった。水田のなかにつくられた並木道が、インドに向けて一直線に延びているのだ。道の両側には木々が植えられ、ところどころ緑のトンネルのようになっている。周囲は緑が眩しい水田で、そのなかを水牛や農夫がゆっくりと動いている。ベンガルの風が流れるなかを車夫が漕ぐ自転車力車に揺られていると、気分はもう夢心地なのである。そんな道が小一時間もつづくのである。しかし国境への道を進む僕のなかでは、さまざまな思いが錯綜している。

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国境というポイントは、さまざまなトラブルがついてまわるのだ。なかなかビザがとれずに強行突破することもあれば、いわれなきいいがかりをつけられることもある。国境に向かうときは、常にそんな不安に苛まれているのだ。だから風景が目に染みる。旅の記憶というものは、不安があってこそ脳細胞に刻み込まれていくものだと、旅の日々が長くなるほど思い知らされるのだ。そんな不安に包まれながら、少しでも心の平衡を保とうと煙草に手が伸びてしまう。煙草を吸ったところで、なにが変わるわけではないのだが、喫煙者というものは、そんな風に煙草に火をつけてしまうものなのだ。